【こんな症例も治りますシリーズ 790】 『 シニア猫の特発性膀胱炎 』も適切な診断と治療で治します

↑ 上の写真は、猫特発性膀胱炎を患う猫の膀胱の超音波エコー画像です。

■ 膀胱壁は著しく肥厚しており、これはこの病気を患う猫によく見られる所見です

 

 

参照サイト:

https://00m.in/dJLAt

 

 

猫 ミックス猫 10歳 メス(避妊手術済)

 

 

【 頻尿になり、排尿時に鳴くようになった。さらに血尿が出た 】とのことで来院されました。

 

 

 

 

◆◆ お話をよく聞くと、最近ストレスになり得る環境変化があったとの事でした。

 

 

 

 

◆◆ 検査から暫定診断

 

 

■ まず、結石、細菌性膀胱炎、腫瘍などの重篤な疾患を除外するため、レントゲン検査、超音波検査、尿検査を実施しました。

 

 

■ これらの検査では、結石を認めず、腫瘍性所見もなし。 尿中に細菌も見られませんでした。

 

 

■ したがって、猫の特発性膀胱炎(原因不明の非細菌性膀胱炎、ストレス関連性膀胱炎)を疑って治療を開始。

 

 

 

 

◆◆ 治療方針・対応内容

 

 

■ 特発性膀胱炎においては、以下のような多角的アプローチを行うことが一般的です:

 

 

(1)環境改善/ストレス軽減

 

猫ちゃんが落ち着ける環境を整える。 隠れ場所を設ける、騒音を避けるなど。

 

 

(2)フェロモン製剤の併用

 

猫用フェロモンを活用し、リラックス効果を期待。

 

 

(3)サプリメント

 

鎮静作用・抗ストレス効果をもつもの(複数種類があります)。

 

 

(4)薬剤療法

 

痛み緩和や炎症抑制を目的とした抗炎症薬、鎮痛薬などを併用(腎機能への影響を考慮)。

 

 

(5)排泄環境の見直し

 

トイレの数 : もともと1個だったが、2個に増設。

トイレの位置や清潔さの配慮。

 

 

(6)食事療法

 

尿路疾患に配慮した処方食に変更

 

 

 

 

◆◆ 治療経過・結果

 

 

これらの治療と対応を行ったところ、徐々に改善を認めました。

 

 

・ 頻尿の程度が落ち着いた

 

・ 排尿時の痛がるそぶり(鳴くなど)も消失

 

・ 血尿も確認されなくなった

 

 

 

 

◆◆ 解説・注意点

 

 

■ 猫の特発性膀胱炎は臨床的に比較的よく出会う疾患ですが、『 特発性膀胱炎 』であると早合点して治療を開始してしまうと、結石・腫瘍・細菌感染といった重篤疾患を見逃すリスクがあります。

 

 

■ したがって、まずは適切な検査でそれらを除外診断することが非常に重要です。

 

 

■ また、特発性膀胱炎は再発しやすく、ストレスや環境変化が引き金となることが多いため、長期的なケア・モニタリングを行うことが望まれます。

 

 

 

 

獣医師 土屋優希哉

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